〇〇、始めました。

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「で? コップ一つにどんだけ時間かけてんのよ? まだ決まらないの?」 「こっちかこっちで迷ってるんだけどさ……。いつか勇ちゃんが色違いを買ってペアにするなら、どっちの柄がいい?」 虎次郎が手に取っているのは、青い水玉模様のやつと、下の方だけ波のように青が塗られたやつ。 それを虎次郎は真剣に見ているけど、私には溜め息を吐きつつ呆れて見るしか出来ないわ。 「いつかも今も、キミとペアを買う気はないわ。この先ぜーったい付き合うだなんて無いんだし」 「そう? 俺はぜーったい勇ちゃんを落とすけどね。勇ちゃんみたいに綺麗な人、滅多にいない貴重品だし」 「人を物みたいに言うな」 「俺だってそうだけど? 俺みたいにいい男も滅多にいない貴重品だよ?」 「だとしても年下は論外!! これにするわよ!!」 貴重品だなんて、人を物扱いするなんてとんだ失礼!! 虎次郎のその発言のせいでいらいらとしたささくれたものが胸の内に現れて、それを発散すべく横目で虎次郎を睨みつけた。 そして虎次郎から波のように塗られたコップを奪うと、他にも皿やらスプーンやら食器類が入ったカゴに入れて、足早にレジに向かう。 人の価値を見た目で決める考え方は、大嫌いよ。
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