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虎次郎が何を食べたいかなんて意見は聞く気無しで、私が大好きで良く行くラーメン店にずんずんと歩いて行く。
私みたいな美女が堂々と歩く様はそれはそれは迫力があって、通りを歩く人々は私に道を譲る。
ああ……それがちょっぴり快感だったり。
私の美しさって罪よね、なんて内心うっとりしていれば、しばらく通りを歩いたところにそのラーメン店はあった。
「……営業、してるわけ?」
「してるわよ。ちなみにその言葉は大将に伝えてあげるから」
ラーメン店の外装は、一言で言い表すと、ボロ。
黒色の暖簾は所々破けほつれ、壁は元は白だったのに油で黒ずみ、窓は透明感なんて無くて中が見えない程。
知らない人が見たら潰れた店のように見えるし、どうやら虎次郎も例外じゃない。
でも私は、呆気に取られている虎次郎に構わず、若干波打つ木の戸を開いて中に入った。
途端に、
「らっしゃい!! おう、勇ちゃんじゃねえか!!」
厨房に立つ大将が張り上げた声をかけてくれる。
それに手を上げて笑みを添えて挨拶をしながら、店内を見回した。
店内は厨房の熱気に満たされ熱いけど、これがラーメン店!! て感じで大好き。
昼時とあってテーブル席はサラリーマン達によって埋まり、カウンター席も空きはないようだけど……。
「勇さーん!! 俺達もう帰るからここに座りなよ!!」
“凛子”の常連でもあるお客さんがいて、カウンターを空けてくれた。
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