〇〇、始めました。

13/37
前へ
/690ページ
次へ
虎次郎が何を食べたいかなんて意見は聞く気無しで、私が大好きで良く行くラーメン店にずんずんと歩いて行く。 私みたいな美女が堂々と歩く様はそれはそれは迫力があって、通りを歩く人々は私に道を譲る。 ああ……それがちょっぴり快感だったり。 私の美しさって罪よね、なんて内心うっとりしていれば、しばらく通りを歩いたところにそのラーメン店はあった。 「……営業、してるわけ?」 「してるわよ。ちなみにその言葉は大将に伝えてあげるから」 ラーメン店の外装は、一言で言い表すと、ボロ。 黒色の暖簾は所々破けほつれ、壁は元は白だったのに油で黒ずみ、窓は透明感なんて無くて中が見えない程。 知らない人が見たら潰れた店のように見えるし、どうやら虎次郎も例外じゃない。 でも私は、呆気に取られている虎次郎に構わず、若干波打つ木の戸を開いて中に入った。 途端に、 「らっしゃい!! おう、勇ちゃんじゃねえか!!」 厨房に立つ大将が張り上げた声をかけてくれる。 それに手を上げて笑みを添えて挨拶をしながら、店内を見回した。 店内は厨房の熱気に満たされ熱いけど、これがラーメン店!! て感じで大好き。 昼時とあってテーブル席はサラリーマン達によって埋まり、カウンター席も空きはないようだけど……。 「勇さーん!! 俺達もう帰るからここに座りなよ!!」 “凛子”の常連でもあるお客さんがいて、カウンターを空けてくれた。
/690ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5458人が本棚に入れています
本棚に追加