〇〇〇、拾いました。

3/25
前へ
/690ページ
次へ
居酒屋“凛子”。 狭い路地に並ぶ建物の列に、こぢんまりとしたその居酒屋は建っている。 一階建ての赤塗りのどぎつい建物で、名前も居酒屋にしては不似合いなものだけど。 私は夜、この居酒屋で働いている。 建物の見た目がこぢんまりしていることから、中も当然こぢんまり。 カウンター席があり、ボックス席が五つある程度の本当に小さな居酒屋。 でも味はちゃんとしていて固定客もちゃんとついているおかげで、毎日大繁盛。 まぁ、固定客がついているのは、他ならぬ私のおかげだけど。 「勇ちゃーん! こっち来て酌してちょうだいよ」 「これ前に話していた美味しいって評判のロールケーキ。勇ちゃんに食べてもらう為にさ、並んで買ってきたんだ」 「勇ちゅわーん! アイラビュー!!」 どうよこの人気ぶり。 カウンター席だけでなくボックス席からも声がかかり、まさに店内勇コール。 おほほほ! と、頬に手を当てて高笑いしたいところだけど 「くぉらっ!! 手が止まってる!! 足も止まってる!! せかせか働かないと、あんたの給料カットするわよ!!」 ここの主がそうはさせてくれない。
/690ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5456人が本棚に入れています
本棚に追加