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居酒屋“凛子”。
狭い路地に並ぶ建物の列に、こぢんまりとしたその居酒屋は建っている。
一階建ての赤塗りのどぎつい建物で、名前も居酒屋にしては不似合いなものだけど。
私は夜、この居酒屋で働いている。
建物の見た目がこぢんまりしていることから、中も当然こぢんまり。
カウンター席があり、ボックス席が五つある程度の本当に小さな居酒屋。
でも味はちゃんとしていて固定客もちゃんとついているおかげで、毎日大繁盛。
まぁ、固定客がついているのは、他ならぬ私のおかげだけど。
「勇ちゃーん! こっち来て酌してちょうだいよ」
「これ前に話していた美味しいって評判のロールケーキ。勇ちゃんに食べてもらう為にさ、並んで買ってきたんだ」
「勇ちゅわーん! アイラビュー!!」
どうよこの人気ぶり。
カウンター席だけでなくボックス席からも声がかかり、まさに店内勇コール。
おほほほ! と、頬に手を当てて高笑いしたいところだけど
「くぉらっ!! 手が止まってる!! 足も止まってる!! せかせか働かないと、あんたの給料カットするわよ!!」
ここの主がそうはさせてくれない。
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