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「ここが、あたしの配属先か……」
誰に話し掛けるわけでなく、あたしは呟いた。台詞の内容は別段かっこつけていないが、公然の場所で一人颯爽と呟く行為自体に若干鳥肌が立つ。
あたしの目の前にそびえ立つこの建物は一見すると、綿飴みたいな猫を飼ってるマダムが住みそうな高級マンションみたいだが、実際は自衛軍に所属する軍人達の寮だ。
汚れ一つない二メートルはあるかという門や丈夫そうな純白の壁は高貴な雰囲気を醸し出しているが、実際には兵士たちの身の安全を守る為にあるのだろう。こうして偉そうに立ちはだかっている間も監視カメラはあたしを睨み付ける。
こんな立派な寮に住めるのだという優越感に浸るのもいいが、そろそろ肌寒くなってきた。風よ、空気読め。……我ながら意味のわからない文章だ。そろそろ中に入ろう。
あたし、琴音咲季(ことねさき)は今では先進国ならばどこでも配備している最新鋭兵器、アームド・アイギスの整備士としてここに配属された。もちろんこの寮自体に配属されたわけではない。寮の管理人のおばちゃんという職業はあたしにはあわない。ここに住んでいる部隊に配属されたのだ。
アイギスを装着することのできる部隊はその戦果、実績からAからCにまでランク付けされる。そしてその中でさらに1から3にまでランク付けされる。つまり、一番下のランクはC3、一番上のランクはA1というわけだ。この寮に住む事が出来るのはA3以上のエリートだけだ。
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