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月が真上からちょっとかたむいた時
『キャッ』
女の声がしたその後ろから男の声も聞こえる
【どうした……ん?人か?血が出てるじゃないか、もしかしたら村に下りる前に山賊にやられたんじゃ】
男はそう言うと手を合わせた。
『かもしれないわね、あの村の人かも、でもどのみち同じだったかも、見て』
そう言うと女は村の方に指を指した
その先には赤く空が染まり、その下は紅蓮の炎が立ち込めていた
【あれでは、村は全滅だな】
男がそう言った時、左近が目を覚ました
「う~ん……誰だ人が気持ちよく寝ているのを邪魔するのは」
左近が死んでいると思っていた二人は驚いた
【『うわ!』】
その声に不機嫌そうにする左近
「なんだよ、人をお化け見たいに」
二人は左近が生きていた事に安心した
【あんた、生きていたのか、しかしよくそれだけ血を流して正常でいられるな】
左近はキョトンとした顔で提灯で照らされた着物を見て二人が驚いている事に納得した
「あ~これはさっき助けた動物の血だよ」
それを聞き二人は顔を見合わせ笑った
『そうなの~私はてっきり山賊に襲われたのかと思ったわ』
女は笑いながら言った
【俺も君が奴らに抵抗してやられたんじゃないかと思ったよ】
二人の言葉に左近は違和感を感じた
「あの…山賊って何の話しだい………?」
男と女は自分達が見た事、そして村が大変な事になっていると左近に教えた
「ふもとの村って…俺の……も、戻らないと」
左近が村に戻ろうとするのを二人は引き止める
『やめな、あんたも殺されちまうよ』
女が引き止めると同時に男は左近の腕を掴む
【そうだよ、いまさら行っても手遅れだ、やめとけ】
だが左近は聞こうとしない、男の腕を振り払い、暗い山道を左近は駆け降りていった、母と妹の名前を叫びながら
「おっかー、はる坊、俺が帰るまで、待ってろ」
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