4550人が本棚に入れています
本棚に追加
その足音は立ち読みしている俺の隣で止まった。
気にしないで本を読み進める。
「あ、先客いたんだ……」
隣で止まった人物が悔しげに呟いた。
本から目を離し、視線を横に移した。
「君も寺田 勇、好きなの?」
その人物は、俺が立ち読みしている小説を指差し、満面の笑みで俺に話しかけた。
「えっ? あ、ハイ……」
かなりキョドってしまった。
なぜなら、その人物は美少女だったからだ。
誰しも絶世の美女ならぬ、美少女を見たらキョドるだろう。たぶんだけど。
墨を流したような黒髪はハーフアップにされ、毛先には天使のわっかが、目はチワワのように黒い瞳をしていた。
日本人の平均的な鼻筋の下にさくらんぼみたいな唇、華奢で折れてしまいそうな身体に白雪姫みたいな真っ白な肌。
制定のセーラー服の上にブラウンのニットを着て、スカートは膝辺りの短さ。黒のソックスがそれらを引き締め、引き立てている。
誰がどう見ても一点の隙もない完璧な美少女だ。
思わずぽーっと見惚れてしまう。
「私の顔、なにか付いてるかな……?」
美少女は困ったように眉を下げ、顔を手のひらでぺたぺた触りだした。
たぶん俺がずっと美少女の顔を見てたから勘違いしたんだ。美少女は考えも可愛いな。
「あ、なにも付いてないです!
スミマセン……」
俺は恥ずかしくなって謝ったら美少女はにっこり笑い、
「付いてない? よかった。
謝らないで、大丈夫だから!」
と言ってくれた。
まさしく天使です。
街角アンケートで『天使はいると思いますか?』と聞かれたら、俺はきっとこう答えるだろう。
『さっきまで図書室にいた』と。
最初のコメントを投稿しよう!