━episode 0━

5/11
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
目の前には、拳銃を構えながら、他の警官と無線でやりとりしている制服姿の若い、体つきのいい男が一人。 そいつは無線で他の警官と話ながら、俺にじりじりと近づいてくる。 それに応じて、俺は、危険意識に苛まれてしまい、ずるずると後ろの壁に向かって後退する。 ピンチの時に決まってにじみ出る汗が頬まで流れて、やけに鬱陶しい。 トスッ! その音と同時に、完全に密着した背中と、その時の振動で飛び散る汗。 まさに今、絵に描いたような、“袋の鼠”だ。 「…おいッ! お前、もう逃げられないぞ。」 いつの間にか話し終わっていた警官は、無線を胸のポケットにしまいながら、そんな台詞をはいた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!