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「俺みたいな人間を求めているとはどういう意味ですか。」
「わが社には働きたくないギャンブル好きの方が必要なのです。」
新道の返答に、遥斗は戸惑いながら考えていた。
何を言っているんだ新道さんは、働きたくないギャンブル好きを求めているだと……。
有り得ないだろ。
働かなければ金がないのだから、そもそもギャンブルなんて出来る訳ないじゃないか。
遥斗は少し荒々しく矛盾を新道にぶつけていた。
「働かなければギャンブルも出来ないじゃないですか新道さん。」
遥斗の質問に新道は即答で答えていた。
「それはこの世の中の話しでしょ。わが社の王国には職場はありません。」
「この世の中……。すいません話しが全く見えないのですが。」
「王国とはその名の通り一つの国なのです。国には国の方針ががあります。わが社の王国でお金を稼ぐ方法は、働く事ではなくギャンブルなのです。」
国の方針がギャンブルで金を稼ぐ……。
どういう事だ。
頭で全く理解できない話しの内容に、遥斗は思考が止まり固まっていた。
微動だにしない遥斗を見ながら新道は更に語り掛ける。
「王国の国民は、すべてのお金をギャンブルで稼ぐのです。他にお金稼ぐ術は存在しません。国民全員が胴元であり、また逆にギャンブラーなのです。胴元ギャンブラーとは王国の全国民を指す言葉なのです。」
なっなんだってぇ……。
新道の言葉の内容は、遥斗の胸を刺激していた。
遥斗は両手をテーブルの上に乗せると、前のめりになって新道に問い掛けていた。
「国民になれば俺も胴元で稼げるかって事ですかぁ。」
「うむ。もちろんです。遥斗さんが胴元になって他の国民からお金を稼ぐか、もしくは、他の国民が胴元になっているギャンブルに、遥斗さんがギャンブラーとなって挑戦して勝つことでお金を稼ぐのか……。王国でお金を得る方法はこの二つしかありませんから。」
遥斗は興奮して、身体は小刻みに震えていた。
「俺も胴元になれる。まじでかぁ……。凄い。凄いですよ新道さん。」
先ほどまでの下を向き落ち込んでいた時が嘘の様に、遥斗の顔は生き生きしていた。
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