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「正直未練なんてありません。ですが……。日本に戻れないとなれば考える所があります。理由は言えませんが……。」
「うむ。大丈夫ですよ。理由など聞きませんし、希望なら日本に帰っても構いません。帰るには一つ条件がありますが。」
「条件……。条件とはなんですか。」
「それは王国でしかお話し出来ません。」
「そうですか……。あっそれから先程も言いましたが、俺は無一文ですが……。」
「今現在無一文でも問題ありません。その点も詳しくは王国でお話しします……。それでは改めてお聞きします。王国で生きていきますか。それとも変わらず日本で過ごしますか。返事は本日この場でしか聞きませんから、よくお考え下さい。どちらが遥斗さんの人生に必要な国かは、すでに答えは決まっているとは思いますが……。」
暫く考えていたが、遥斗に選択肢は無かった。
仮に王国行きを断っても、明日から生きていく術が見いだせなかったからだ。
遥斗は決断する。
この話しは天が与えてくれたチャンスなんだ。
このチャンスを掴み、生かす事が出来たら俺の人生は復活するはず……。
捨てるものも、守る人もいない。
迷う時じゃない。
行くしかないんだぁ。
「新道さん。王国に行かせて頂きます。お願いします。」
遥斗は王国に行く決意を新道に告げていた。
素性も知らない会ったばかりの新道の話しを、考え抜いた末に受け入れたのだった。
嘘でも詐欺でもいい。
今の俺には断る理由がない。
新道さんに賭けてみよう。
これは、俺の人生のギャンブルだ。
遥斗の決心を聞いた新道は、右手を差し出していた。
遥斗は両手で新道の手を握り二人は握手を交わしていた。
「よろしくお願いしますね遥斗さん。」
「こちらこそよろしくお願いします。」
この瞬間……。
遥斗の王国入りが決定したのだった。
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