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「それでは遥斗さん。王国に行く前に簡単なアンケートに答えて下さい。」
新道は一枚の紙とボールペンを、着ているスーツの内ポケットから取り出すと、遥斗に手渡していた。
紙とボールペンを受け取った遥斗は、書いてある内容に目を通していた。
アンケート用紙の内容は、何を意味しているのか分からない内容だった。
問1、あなたは次の内どれを選びますか。
家賃三万円の住宅
家賃二万円の住宅
家賃一万円の住宅
問2、あなたは将来お金持ちが約束されています。
では、あなたが思うお金持ちとは、どのくらいお金を持った時でしょうか。
アンケート内容に少し戸惑いながらも、遥斗はアンケート用紙に記入していた。
家賃の内容には、三万円の所に丸をして、お金をの内容には、一億円持った時と記入していた。
記入を終えると、遥斗はアンケート用紙を新道に渡していた。
新道はアンケート用紙に目を通すと、無言でスーツの内ポケットに戻していた。
それから新道は一切口を開こうとせずに、遥斗を見続けていた。
ただ見ているだけの新道に、遥斗は目のやり場に困り果てて、何度も辺りを見回していた。
部屋は再び沈黙が支配していた。
新道の視線や、沈黙に耐えられなくなった遥斗が、口を開こうとしたまさにその時……。
「王国へようこそ遥斗お兄ちゃーん。」
突然遥斗の後方から声が聞こえていた。
遥斗が振り返ると、部屋から出て行ったはずの少女の姿が……。
その瞬間……。
遥斗の視界から光が消えて、暗闇が支配する空間へ落とされたのだった。
椅子から床に倒れた遥斗を、新道は黙って見ているだけだった。
「遥斗お兄ちゃん寝ちゃたねー。睡眠薬の水飲んだみたいだからねー。新道のおじちゃんは、睡眠薬が効いてくる時間通りにお話し終わらせるのはさすがだよねー。」
「うむ。まぁこれが私の仕事だからね。さて、後はビルの前にいる三鷹(みたか)に任せて、私達は王国に帰るとしようかミミ。」
「はーい。」
「さぁ新しい胴元ギャンブラーの誕生だ。頑張って下さいよ遥斗さん。」
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