ギャンブル王国スカーズ

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「んっ……。」 遥斗は意識を取り戻して目を開けると、清々しい青空を目の当たりにしていた。 自身が寝ていた事に戸惑いながら、上半身を起こして不思議そうに回りを見渡していた。 「なんだこの場所は……。俺なんでこんな所で寝ていたんだ……。ここどこだよ……。」 遥斗の目に写る光景は、今までの人生で見た事もない場所だった。 全面無色の白い王宮が、見渡す限り建ち並んでいたのだった。 テレビや雑誌で見る世界中の国々の光景とは異なり、建物や地面、時折通過する乗り物など、すべて白で統一されていたのだった。 明らかに日本とは異なる光景に、思考が停止していた遥斗は、その場から動く事が出来ずに座り込んでいた。 「うむ。お目覚めですね。」 口を半開きにしたまま呆然としていた遥斗は、後方から聞こえて来た声に反応して振り返る。 「……。あっ新道さん。」 声を掛けて来たのは新道だった。 新道を見た遥斗は、記憶を徐々に蘇らせていた。 「うむ。私が分かるみたいですね。」 遥斗は直ぐ様立ち上がると、新道に問い掛けていた。 「新道さん。ここは……。」 「この国はスカーズと言います。廃棄ビルでお話ししたギャンブル王国ですよ。」 新道の言葉を聞いた遥斗は、一気に記憶を取り戻していた。 「ギャンブル王国……。うわぁぁ。」 遥斗の身体を、喜びの感情が一気に支配していた。 「本当にあったのですね。凄い。凄すぎますよぉ。うわぁここがギャンブル王国かぁぁ。」 喜びを隠せない遥斗の姿は、まるで子供が遊園地に来た時の様に、はしゃいでいたのだった。 内心すべてを信用していなかった国の話しが、現実に存在していた事が、遥斗は嬉しかったのだ。 「うむ。遥斗さんは今日からスカーズの国民です。もう後戻りは出来ませんよ。」 新道の問い掛けに対して、遥斗は元気に答えていた。 「はい。よろしくお願いしまぁす。」 沢村遥斗三十歳……。 日本国民を捨てて、スカーズに舞い降りた遥斗は、胴元ギャンブラーとして生きて行く。 遥斗の第二の人生が幕を開けたのだった。
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