少女

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「はぁはぁ。ぶはぁー。着いたぁ。はぁはぁ……。」 廃墟ビルの周辺は、電灯などの灯りが一切なく暗闇に包まれていた。 近くには国道が通っている為に、乗用車や大型トラックが通過する音だけが辺りに響き渡っていた。 「はぁはぁ……。やべっ。ぶっ倒れそうだ。」 空腹で走り続けていた遥斗は、体力の限界を迎えて、今にも倒れそうな体を支える作業で精一杯だった。 「失礼ですが……。」 「うわぁ!」 暗闇の中で車の音に紛れて突如聞こえて来た声に、遥斗は驚いて思わず声を挙げていた。 遥斗が恐る恐る声が聞こえて来た方向に視線を動かすと、暗闇に溶け込む様に佇む黒いスーツ姿の男性を確認していた。 やっべぇ。見るからに怪しいだろこの人……。 困惑している遥斗に、黒いスーツの男性は問い掛ける。 「このような場所に何か用でもあるのですか。」 「あっすいません。あっあのですね。実は黒い手紙を子供から貰いましてですね。その手紙の内容がこの場所に来る事だったのですが、子供のいたずらですよね。すいませんです。すぐに帰りますからですね。」 緊張と恐怖に加えて疲れきった身体。 色々な事が重なり、説明する遥斗の言葉は、どこかぎこちなかった。 黒いスーツの男性に会釈すると、遥斗は重い身体を引きずるように、廃墟ビルから離れようとしていた。 立ち去ろうとした遥斗を、黒いスーツ姿の男性は引き止めていた。 「お待ちください。いたずらではありませんよ。」 「……。えっ。」 「待っていました。胴元ギャンブラーになる資格を持つ選られた人間のあなたをです。」 選られた人間に胴元ギャンブラーだと……。 手紙の内容と一緒だ。 本当にいたずらじゃないのか。 手紙の内容と、目の前の男性の言葉が一致している事に、遥斗は驚きを隠せなかった。 「もう時間がありません。ビルの二階の部屋に急いで下さい。詳しい話しは中の者がしますので、それからこれをどうぞ。」 黒いスーツの男性は、遥斗に水の入ったペットボトルと懐中電灯を渡していた。 遥斗は会釈して受け取ると、貰った水をのみながら疲れた身体に鞭を入れて、廃墟ビルに足を進めていた。 いたずらじゃなかった。 確かにあんな子供が胴元なんて言葉を知ってる事があり得ないよな。 でも、普通子供に胴元なんて言葉を教える親がいるだろうか。
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