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――東京都 神沢市 第三区 とあるアパート前――
――やっと着いた。
アパートの手前で、一人の少年が額の汗を拭いながら、見上げていた。
春。出会い、入学、就職。その他、多くの新しい出来事が盛り沢山の季節。
期待と緊張で胸が踊る人達も少なくはないだろう。
この少年、池宮幸裕もその内の一人だった。
今年高校一年生になる彼は、住み慣れた町を離れて、遥か遠くにあるこの町に引越してきたのだ。
ここ神沢市は十五年前に東京都内に作られた、まだ新しい町なのだが、政府のおかげもあってか、わずかな時間で大都市に成長した。
今では、都内にいるだれもが憧れる町である。
そんな大都市に昔から興味を持っていた幸裕は、苦手な勉強を必死に頑張って、なんとか合格することが出来たのだ。
親は彼の上京を最初は反対したが、幸裕の必死な頼みに、必要最低限以外のお金は自分で稼ぐ、ということで渋々了解したのだった。
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