2人が本棚に入れています
本棚に追加
「おーいナフ!アル坊が消えた」
その報告がもたらされたのは、ある日の昼下がりのことだった。
「そうか」
そしてそれは、あまりにも軽く告げられたためにナフードは一瞬流しかける。
それから内容がしっかりと頭の中に入ってきて、ナフードは思わずガタリと立ち上がった。
「はぁ!?」
「いやだから、アル坊がいないってさ」
そう告げるのは同僚のヴァプラ。アル坊というのはここ、ネフティス夜皇国の王、アルナスルのことである。
「今日は大事な軍議がなある日だろう!?」
叫ぶ反面で、またかという思いもある。
ナフードの目の前にいる男、ヴァプラの影響だと思われる王の放浪癖は、なにも今に始まったことではない。
大切な用事をほっぽりだすことは割合よくあることだった。
ただ、問題なのがそれが今日だということなだけで。
「そう!軍議があるだろう?そこで、俺たちがアル坊を連れ戻しにいこうと思ってな!」
ヴァプラがなぜかわくわくしているように見えるのは、きっとナフードの勘違いではないだろう。
「シェリィ」
ヴァプラを呼ぶ。
「お?」
「今日、町ではなにをやっている?」
ナフードの問いかけに、ヴァプラは目をぱちぱちさせてから笑った。
「祭りだ!アル坊は絶対それを見に行ったに違いねぇ」
「お前!絶対それお前がみたいだけだろう!!」
アルナスルをだしに、どうしても見れないはずだった祭りを楽しみにいくつもりだ。絶対。
.
最初のコメントを投稿しよう!