1章 再会

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耳障りなクラクションが鳴り響く。 隣に立っている派手な女が携帯に向かって甲高い声で何やら文句を言っている。 キンキンと響く声に、何だか自分が文句を言われている気分になり、知らずため息をついた。 目の前の信号が青に変わり、様々な雑音とともに人々が行き交う。 人波を乱さない程度に、少し早足で駅前の混雑を抜け、目的地に急ぐ。 ビルに囲まれた大通りを歩くと、街路樹が夜の湿気を含み新緑の匂いをあたりに放っていた。 無意識に空気を吸い込んだ。 なんだか胸がざわつくのはこの匂いのせいだろうか。 一度立ち止まり、携帯でメールを開き、今日の目的地を確認した。 ――――――――――― ✉ 2011/05/06 FROM 中村大介 SUB クラス会 来週のクラス会の詳細を送ります。 日時:2011年5月13日(金) 19時~ 場所:西新宿 店:居食屋「空」 http://www.dining.sora 今回は初めて、ほぼ全員参加になりそうです。 当日何かあったら連絡下さい。 END ――――――――――― クラス委員の中村の味気ない文章は相変わらずだな。 思わず口の端が上がる。 メールにはご丁寧に地図まで添付されていた。 「ほぼ全員参加か…」 ということは、きっと、あいつも来るんだろう。 メールをもらった日から今日までの1週間はなぜかやたらと長かった。 落ち着かない思いを抱えながら、店に到着した時には19時を過ぎていた。  
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