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外界から閉ざされた暗い洞窟。日の光など届かないはずのそこに咲き乱れる無数の彼岸花。それは蝋燭のようにぼんやりと光り、洞窟内を照らしていた。
その中心には一人の少女がいた。伸びきった髪は少女の全身を覆い隠し、黒い塊がぽつんと在るように見える。
「また一つ……花は散る」
弦楽器のように紡ぎ出された少女の声と共に、一輪の彼岸花が光を失い灰と化した。
「昔はもっと……もっと、たくさんだったのに」
感情のこもらない声。
そうして、愛しそうに彼岸花を見つめ、少女は言葉を続けた。誰にも聞かれることはないのに。
「世界は変わらない--誰も私を愛さない。醜く穢れた存在を許さず排除する」
彼岸花を愛で、果てしなく広がる天井を仰ぐ。まるで夜空のような孤独な闇を。
昔はもっと明るかったのだ。天井が見えるぐらいに。しかし、今では自分の姿すら見えなくなってきた。
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