Xの行方

3/9
141人が本棚に入れています
本棚に追加
/94ページ
「りな、いつだって俺にはりなが一番なんだ」 「うん」 「重い?」 「ううん、全然」 嬉しい、と呟いて、彼女の腕に力がこもる。 「私もだよ」 「うん」 「だから迷わないで」 「・・・」 「あなたが何だろうと、私はあなたが好き。大好き」 俺はまた、泣いたんだろうか。 頬が熱かった。塩酸が流れているような気さえした。 その言葉が、胸を抉るようだった。俺の中の何かを抉り取る様だったのだ。 「陽になら何をされてもいい。許せるの」 「どうして?」 「・・・いつか教えてあげる」 離れた彼女と目が合う。 「泣いてる」 「かっこ悪いな」 「ううん、とっても素敵」 また、どちらともなく唇を重ねる。 いくら重ねても、足りないと、思った。 .
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!