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「海、見に行かない?」
貴方にそう誘われて、一緒に来たのは地元の海。
空は雲が多く、太陽が顔を出したり隠れたりしていた。
夕方が近いせいか、辺りには全く人気がない。
まだ春先。海から吹いてくる風は思いの外冷たかった。
コートだけじゃなくて、マフラーも持ってくるんだった。
そう思っていると、後ろからふわりと白いマフラーを巻かれた。
「思ったより寒いね」
貴方はそう言って、私に温かい紅茶を差し出す。
「ありがと…」
ペットボトルを受け取る。
温かかった。
「あそこ、座ろうか」
貴方の指差す先に、木製のベンチ。
貴方についていって、隣に座った。
街の喧騒から遠く離れたこの場所。
聞こえるのは、波がうち寄せる音と、風が渡る音だけ。
貴方は何も言わない。
紅茶を口に運びながら、私は海を見つめた。
穏やかに、時間が流れていくような気がした。
貴方は、私をどう思ってるんだろう。
私は、貴方の彼女になりたいのかな。
そんな問いが、胸の中ではじけた。
……貴方のこと、もっと知りたい。
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