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体温計は38℃半ばを表示した。
熱以外の症状はなさそうだ。
「着替え…」
僕はゆっくり起き上がって、クローゼットからパジャマを出した。
「大丈夫?」
「着替えるからあっち向いてて」
君は慌てて背中を向けた。
パジャマに着替えて、解熱剤を飲む。
もう一度ベッドにもぐり込んだ僕に、君は心配そうに尋ねた。
「何か欲しいものはある?」
「いや…いいよ」
……君がここにいてくれれば、それでいい。
僕の意識は、急速に闇の中に吸い込まれていった。
目を覚ますと、もうだいぶ明るくなっていた。
部屋の中は、しんとしている。
……確か、泉澄が来てたよな。帰ったのか?
急に、心細くなる。
起き上がって体温を測っていると、玄関のドアが開く気配。
「あ、蓮起きたんだ」
戻ってきた君は、コンビニの袋からスポーツドリンクを取り出した。
「熱、下がった?」
熱は六度台まで下がっていた。
「よかったー。はい、水分とってね」
安堵の表情でそう言って、僕にグラスを渡す。喉を流れていく冷たいスポーツドリンクが、やけにおいしく感じた。
「蓮が寝てる間に、キッチンあさってお粥作ってみたの。食欲ある?」
僕はベッドから出て、君を抱きしめた。
「…ありがとう、泉澄」
「起き上がって平気なの?」
「うん、風邪じゃないから」
……心配してくれる君がいる。
もう、暗闇の中に独りじゃない。
そう思わせてくれる君が、ひどくいとおしかった。
―――――To be continued...
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