落花流水

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鏡の前で、入念にメイクと髪型のチェックをする。 忘れ物はない。 ブーツを履いて玄関のドアを開ける。冷たい空気に身が縮んだ。 鼠色の雲が、空を覆っている。 ……季節が逆戻りしたみたい。 そう思いながら、マフラーをしっかりと巻きつける。 私は待ち合わせ場所の駅へと急いだ。 駅まで歩いて10分弱。 待ち合わせ時間には余裕を持たせて着いたのに、入口の前には貴方の姿。 思わず小走りで駆け寄る。 「蓮ごめん、待った?」 「いや、そんなに待たなかったよ」 いつもと変わらない穏やかな口調に、安心させられる。 「行こうか」 貴方の横に並んで、隣接する駅ビルに入った。 ビル内に新しくオープンした、広い雑貨店。 文具や食器、カトラリー類、インテリア小物などがそろっている。 客も多く、賑わっていた。 「蓮、見て見て。まりもー」 「お、すごい。浮いてる」 「サボテンもいいなー。蓮の部屋に置くの」 「僕のところに? なんで」
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