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しとしとと雨の降る夜。
小さな雨粒が、さしている傘に落ちてきて、ぱたぱたと音を立てる。
バイトが終わった、夜10時過ぎ。
傘をさして足早に歩く人影も、まばらになっている大通り。
……この前は、土砂降りの中を走っていったっけ。
車のライトが忙しく行き来する様を見ながら、貴方のマンションに向かった。
「いらっしゃい。お疲れ様」
玄関で出迎える貴方の変わらぬ笑顔に、ほっとする。
「お邪魔します」
ここに入るのは三回目。最初は合コンの三次会で、大勢でおしかけた。
……確か、ちょっと迷惑そうな顔をしていたよね。
その時初めて、貴方が私と同じ高校に通っていたことを知った。
コートを脱いで部屋に入ると、目の前に花束を差し出された。
「誕生日、おめでとう」
カラー、カーネーション、ガーベラの、白を貴重とした小ぶりの花束。
「あ、ありがとう」
「適当に座って」
部屋の中は間接照明の淡い光で照らされている。
テーブルの上には5号サイズのベリータルト。
ローソファに腰を下ろして、部屋の中を見渡す。
生活感がない。
必要最小限のものでまとめられた、そんな空間。
貴方はワインを持ってきて、隣に座った。
「泉澄と同じ年の、シャトー・マルゴーだって」
「高そうじゃない、それ。開けちゃうの?」
返事をせずに、貴方はコルクを抜いてしまう。
「二十歳、おめでとう」
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