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ワイングラスに注がれた、綺麗な深紅の液体。
「泉澄にとって、いい一年になりますように」
私たちは、グラスを合わせた。
「美味しい」
「本当? よかった」
切り分けられたタルトを口に運ぶ。
「こんな誕生日、初めて。今まで、祝ってもらったことないから」
「じゃあ、二十年分のお祝いだね」
貴方はワインをつぎたしながら言った。
「ありがとう」
「……まだ、ちゃんと言ってなかった」
急に貴方が真剣な面持ちになったので、どきりとした。
「泉澄、…付き合ってくれる?」
ひたむきな眼差しに、胸が高鳴った。
「…うん」
こくりと頷くと、貴方は大きなため息をついた。
「よかった…すごい緊張した」
「えー、蓮でも緊張するの?」
「緊張しない方がおかしいでしょ」
ひとしきり笑いあって、貴方は私の肩を引き寄せた。
「泉澄が生まれてきたことに感謝。出会えて、本当によかった」
その言葉は、私の胸に深く刻みこまれた。
優しいね。
貴方は、いつも私の欲しい言葉をくれる。
胸がいっぱいになって、涙が滲んだ。
貴方の手が、頬に触れる。
顔を上げる。唇が重なった。
ほのかに、ワインの香り。
幸福感に満たされながら、私は目を閉じた。
―――――To be continued...
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