落花流水

3/95
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/95ページ
「無理には聞き出さないよ。言いたくなったら、言えばいい」 穏やかに答えて、僕は君の頬にそっと触れた。 君の瞳から、大粒の涙が溢れた。 声をあげず、静かに泣く君が、とても儚げに見えて。 フローリングの床に膝をつき、君の両手を握った。 「僕は、君が頑張ってることを知ってるよ。だから、僕の前では頑張らなくていいんだ」 こくん、と頷くと、君は手を離して涙を拭った。 外からは、雨が大地を叩く音。 それ以外、何も聞こえない。 部屋の中は、すっかり暗くなっている。 君は、僕のベッドにもぐりこんだまま。 眠ってしまったのだろう。君は膝を抱えて丸くなったきり、身動ぎすらしない。 僕は、君のそばに座った。 闇の中にぼんやりと浮かぶ、君の寝顔。 ……辛い思いも、悲しい思いも、全部雨が洗い流してくれればいいのに。 君を起こさないように、ゆっくりとその手に触れた。 伝わってくるぬくもり。 ……この手を、離したくない。 そのまま僕は目を閉じた。 雨の降りしきる夜のことだった。 ―――――To be continued...
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!