13人が本棚に入れています
本棚に追加
/95ページ
「無理には聞き出さないよ。言いたくなったら、言えばいい」
穏やかに答えて、僕は君の頬にそっと触れた。
君の瞳から、大粒の涙が溢れた。
声をあげず、静かに泣く君が、とても儚げに見えて。
フローリングの床に膝をつき、君の両手を握った。
「僕は、君が頑張ってることを知ってるよ。だから、僕の前では頑張らなくていいんだ」
こくん、と頷くと、君は手を離して涙を拭った。
外からは、雨が大地を叩く音。
それ以外、何も聞こえない。
部屋の中は、すっかり暗くなっている。
君は、僕のベッドにもぐりこんだまま。
眠ってしまったのだろう。君は膝を抱えて丸くなったきり、身動ぎすらしない。
僕は、君のそばに座った。
闇の中にぼんやりと浮かぶ、君の寝顔。
……辛い思いも、悲しい思いも、全部雨が洗い流してくれればいいのに。
君を起こさないように、ゆっくりとその手に触れた。
伝わってくるぬくもり。
……この手を、離したくない。
そのまま僕は目を閉じた。
雨の降りしきる夜のことだった。
―――――To be continued...
最初のコメントを投稿しよう!