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知ってる?
僕が、ずっと君を見ていたこと。
隠してたよね。痛みを、全部。
長い間、痛みにさらされ続けて、それが痛みだと感じなくなっていたよね。
僕も、心が痛かった。
無理に笑顔を作ってる、君を見て。
『大丈夫だよ。平気だよ』
まるで、そう自分自身に言い聞かせているように、明るく振る舞っていたね。
もう、いいから。そんな我慢、しなくていいから。
強くて、どこか危うくて。
いつの間にか、僕はそんな君に惹かれていた。
雨は、まだ降り続いている。
闇の中、時計の針は11時になろうとしていた。
僕は静かに立ち上がって、脱衣所の君の濡れた服を洗濯機に放り込んだ。
戻ってくると、君は起き上がっていた。
「ごめん、起こしちゃった?」
沈黙が、部屋に満ちる。時計の秒針が、時を刻んでゆく。
「……んなさい…」
耳に辛うじて届いた、弱々しい言葉。
「何故、謝るの?」
ベッドのそばにしゃがんで、君を見つめる。
「私、迷惑かけてるよね」
立てた膝に顔をうずめて、君は言う。
……タスケテ。
君の、心の悲鳴が、聞こえたような気がした。
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