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部屋の中に、柔らかな朝の光が満ちていた。
時計を見ると、午前4時半。
ベッドのそばに座ったままだった。
……あ…、そうか。
昨日の出来事を思い出した。
僕のベッドで熟睡している君。布団からわずかに髪が見える。
くすりと笑って、僕はキッチンへと立った。コーヒーメーカーを出して、手際よくコーヒーを入れる。
部屋に芳香が漂った。
マグカップに注いで一口飲む。
君の起きる気配はない。
脱衣所に入って、君の服を洗濯機から取り出す。シンプルなコットンシャツとジーンズを丁寧にたたんで、服を脱いで風呂に入った。
蛇口をひねると、熱い湯が降ってくる。
現実に、引き戻されるような感覚。
昨日、君は僕を頼ってくれたけど。僕は果たして、君を支えることができるだろうか。
それでも。
君を、守りたいから。不安よりはるかに強いそんな想いが、胸を満たしていく。
髪を拭きながら部屋に戻ると、まだ君は眠っているようだった。
ベッドのそばに歩み寄る。君の服を枕元に置くと、布団から覗く君の横顔。
……この眠りを、守りたい。
「ん……」
寝返りをうって、君はうっすらと目を開けた。
「おはよう」
君はがばっと跳ね起きる。僕の声に驚いたようだ。
「えっ? あ、あの」
「コーヒー入れてあるけど、飲む?」
見る間に君の頬が赤く染まった。
笑いをこらえてキッチンに行き、コーヒーをふたりぶん持ってきて、君に渡す。
「ありがとう…」
カップを受け取って、赤い顔のまま君はコーヒーに口をつけた。
携帯の着信音が響いた。
びくり、と肩を震わせ、すぐに携帯に出る君。話す表情も、声もかたい。
程なく電話を切った。
「ごめんね。もう帰らなきゃ」
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