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その頃の晴奈は“リストカット”を繰り返していた。
中学の頃から振られたり嫌なことがあるとすぐに剃刀を手首にあてていた。
今では何もないのに切ってしまう。
何か足りないものを補うように……。
それを知っていた友達は止めてくれた人もいた。
離れていく人もいた。
だけど……やめられなかった。
この気持ちはリスカをやってしまう人にしかわからない。
わからなくていい感情だった。
死にたいわけじゃない。
「死にたい」
と言っていても本当に死にたいわけじゃないんだ。
落ち着く……。
そんな気持ちだったかもしれない。
生きてるんだって思えて落ち着いたのかもしれない。
誰に止められても無駄だったんだあの頃は。
自分がどうでもよかった。
晴奈の腕には今でも無数のリスカの傷跡がある。
深く切った所は肉が盛り上がり、跡が残ってしまっている。
痛くはなかったんだ。
深く切れば切るほど、
「私にはこんなに深く切れる勇気があるんだ……」
なんて優越感……おかしかったのかもしれない。
流れる血の温かさで誰かに支えられているような気になっていた。
そんな馬鹿な私だった。
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