目が覚めたらそこは

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 焦って混乱する。  どうすればいい。あいつらの気を反らせられればいいのか? でも、どうやって。  何かないかと、制服のポケットに手を突っ込む。  手に当たる感触はゴツゴツした携帯の感触と、音楽プレイヤーの感触。それ以外は家の鍵の感触だ。  鞄の中にはお菓子が入っていたはずだが、今手元に鞄はない。  そうやって探っている間にも、狼みたいな奴らが近付いてくる。  鍵を投げるか?  ふとそんな考えが浮かんだ。  狼とは言え、犬科の動物だ。音のするものが投げられたら、そちらに意識が向くのではないか。  そう考えると後は早かった。  俺はポケットから鍵を出すと、何もない方向に向かって思い切り投げた。  チャリン、と小さな金属音が辺りに響く。  すると、どうだろうか。狼たちは俺の思惑通りにそっちに顔を向けて、興味を示す。  匂いでそこには誰もいないということがすぐにばれるだろうから、長くは持たない。逃げるなら今の内か。  俺は狼達が身体を鍵の方に向けた瞬間にその場から逃げ出した。 「くそっ、やっぱり着いてくるかっ」  吐き捨てるように呟く。  逃げ出して暫くしてから、後ろから複数の足音が聞こえてきた。恐らくあいつらだろうが、怖いから振り向きたくない。  何故か俺の足は驚くほど早いが、たかが人間の足だ。狼から逃げ切ることなんて出来ない。  俺はより一層足に力を込める。ずっと全力で走っているから足が棒のようだが、ここで足を止めたらあいつらに食われるだけだ。絶対に止められない。  歯を食いしばって、乱れる息をさらに乱して走り続ける。  そうやって逃げていると、前方から光が差し込んでいるのが見えた。出口かもしれない。心なしか、人の叫び声も聞こえる。  
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