プロローグ

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 そんな神社の前を通り過ぎる時、なんとなく呆と褪せた朱色の社を眺めていた。  そして、もう神社を越えようかという時に、視界の端に何か異様な光を一瞬だけ捉えた。いかんせん一瞬だけだったので、どんな光かはよくわからなかったが、それが『正常でない』光だということは、肌で感じた。  その俺の感性を肯定するように俺の背中をぞわぞわと嫌な感じが伝って、腕は鳥肌が立っていた。  ただまあ、好奇心というものは凄いらしい。俺はいつもホラー映画とかで、怖がりながらも見に行く登場人物に対して「お前なんでそこ見に行くんだよ馬鹿だろワロス」みたいな思考しか持てない人間なのだが、まあ今ならあいつらの気持ちもわかる。  気になるのだ。嫌な感じとか、異様な感じとか、とにかく、男の子の好奇心をくすぐるのだ。  それに、俺はファンタジーとかSFとかが好きな人間なのである。これは、中々に興味の引かれる現象ではないか。  俺は自転車を一旦止めてズボンのポケットから携帯を取り出す。サブ画面で時間を確認。八時七分。時間的には余裕が有り余っている。  俺は自転車をUターンさせて神社に入る。周りの木が太陽の光を遮っていて不気味というほどでもないが薄暗い。 んでもってさっきの異様な光は無い。相変わらずぞくぞくする嫌な感じはするけど、目に見えて怪しいものは一つも無い。見た目は至って普通の神社だ。  こういう時は社が怪しいのが常套だろう。そう思って社に近づく。  社にも至って変わった所は無い。古びた賽銭箱に閉じられた扉。褪せた朱色の外観。  賽銭箱を覗き込んだって何も見えはしない。というか、見える賽銭箱なんてありはしないと思うけど。あったらあったで困る。  
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