目が覚めたらそこは

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 富士の樹海かよ。  そんな気持ちが湧き上がってくる。いや、富士の樹海とか知らんけど。  終わりが見えない。俺終わりが見えないのとか目的が見えないのとかって嫌いなんだよね。  そんな考えができるくらいには落ち着いてきたと思う。流石に三時間以上この状況ならなれる。  人間が状況適応能力が高い生物だということが思い知らされる。今の状況にとっては、まあ嬉しい能力だ。  少し開けた場所に出たので、少し休もうかと思って近くの樹にもたれるように座り込む。  その瞬間――すぐ近くで獣の唸り声が聞こえた。  グルル……と、低い唸り声。肉食獣が獲物を射程圏内に納めた時のような、威圧的な重さを含んだ鳴き声。  心臓が信じられないくらい早く脈打つ。尋常じゃない冷や汗が流れる。  熊? 猪? 日本で人を襲う肉食動物なんてそれくらいしか考えられない。  ガサ、とまた一歩近付いて来る。唸り声がさっきよりも大きい。  どうする? いや、どうすればいい? 対抗手段なんかない。そもそも丸腰で肉食動物なんかに勝てる自身も強さもない。俺は一般的な高校生だ。 一応肉食動物の姿を確認しようと、音のする方を向いた。そしてその瞬間後悔した。  そこにいたのは紅い目をした真っ黒な体毛の犬より少し大きい、鋭い牙を持つ獣だった。 「な、んだ……あれ……」  女になって初めて声を出した。女にしては少し低い声だったが、そんなことを気にしている余裕は無い。  あの生き物はなんだ。狼? いやでも、日本の狼は絶滅したはずだ。それに、紅い目に真っ黒な体毛の狼なんて聞いたことが無い。  でも、もし仮にあいつが狼だとすると―― 『グルルゥ――』  やっぱり……!  ばっと周りを見回すと、さっき見た狼みたいな獣が俺を囲むように十数匹唸っていた。  一匹狼とかいう言葉のせいで狼は単独で行動すると思われがちだか、実際には群を作って群で行動する生き物だ。  まずい、どころの騒ぎではない。絶対絶命だ。  ここが日本なのかも怪しくなってきたし、その前にこの状況をどうやって突破する。  どうする。どうすればいい!? 狼に囲まれて、生き残れるのか!?  
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