第2章:男の子から女の子へ?残酷で冷血な病

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このやりきれない思いが心に残ったまま、ピッチングマシンが放ったストレートをバットに捕らえたと思ったが、打球はバッティングゲージに当たり、打球の力がネットに吸収され、ボールは力無く地面に落ちた。 「くそっ……」 「スイングに迷いが見えているな、それではいい打球が飛ぶことはないぞ。悠斗」 不意の一言に驚いて、後ろを振り向くとバッティングゲージの外側に監督が立っていた。 「監督……」 「今お前が何を思って迷っているのか、俺にはお見通しだ。このままではチームに迷いが伝染し、お前もこのチームも全員が崩れてしまう、その前に防ぐのが俺の仕事だ」 監督の瞳は午前中に見せた表情とは違い、迷いのない決意を秘めているようで力強く感じた。 「バッティング練習終了後、監督室に来い。健司には既に伝えてあるから、俺が言いたい用件はお前が一番理解しているはずだから言わないぞ」 と言うと監督は立ち去り、奥のブルペンに向かっていった。 そしてまたピッチングマシンから放たれたボールがバットに当たったら、いつもはまぐれでしかいかないはずの右中間を打球が抜けていった。
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