出逢いは…

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部屋を見回すと窓際の角に古い洗濯機があった。私は駆け寄り中を覗くと使った形跡がある。ここから洗濯の匂いがしていたんだ。謎もとけ満足した私はくるっとドアの方に振り返った。 そしてぎょっとする。思わず出そうになった声を両手で中に戻した。教室には2つのドアがある。私は廊下から一番近いドアから入りぐるっと回り、心の教室側のドアから出ようと思っていた。もちろん何もなく誰もいないと思うよね。思っていました…。でもそこには人がいて……なんていうか…爆睡しています。  作業室には入ってすぐの角に小さなソファーがあり、その上で狭そうに一人の少年が風に髪を揺らしながら気持ち良さそうに眠っていたのである。黒髪はさらっと少年の眉を流れて、白いシャツの下には赤いTシャツが見える。上履きから見ると私の一つ上の先輩、つまり3年生だ。私は先輩の近くにヌキアシサシアシで寄ると顔を遠目で覗きこんだ。少し汗ばんでいる額にくっつく前髪、本当に気持ちよさそうに寝ている。と…再び風が吹いた。またあの匂い…それは先輩からした。この人のシャツからだったんだ。私がしんみりとしていると…… 「妃菜ちゃーん?」 執行先生の声だ。起きて、私を探してる。私は先輩を起こさない様に廊下へ出た。 「はーい、今行きまーす」そう執行先生に小声で返事をすると再び先輩に視線を戻した。足と手だけ見える。体育祭の練習、さぼったんだ。私はその時、そうとしか思わなかった。  あの時が初めてあなたを見た時だった。 あの時から始まっていたんだね………
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