志村いち。

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 志村さんの顔が完全にこちらへと向けられているのを、視界の端に感じる。僕になにかしらのリアクションを求めているのだろうけど、そうはいかない。    どうせメールの誤変換もわざとに決まっている。志村さんの悪ふざけに付き合っている場合じゃないんだ。 「それからさ」  しかしながら、こちらが黙っていようが向こうは黙ってくれないらしい。 「向こうで太郎君がお喋りしてるけど」  確かに教壇の所で太郎君が、よく響く大きな声でお喋りしている。もちろん犬の太郎君ではない。僕のクラスに馴染み深い、人間の太郎君だ。  ああ太郎君、ごめんなさい。昨日の変なメールのせいで僕は完全にあなたのことを誤解していました。もう二度とあなたのことを露出狂だなんて思ったりしません。誓います。 「チャック全開だよね」  この露出狂が。
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