志村いち。

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 学校では石頭の堅物でとおっているのに、どうして肝心な所がルーズなんだ。どうして純白のブリーフなんだ。 「いわゆるルーズブリーフだね」  ルーズリーフみたいな言い方はやめてくれ。先生が黒板に書いた内容を、熱心にブリーフに写し取るクラスメイトの姿を想像してしまったではないか。 「……志村さん」  駄目だ駄目だ。このままではまた志村さんのペースにのまれてしまう。無心だ、平常心だ、ブリーフにのまれるな。僕はトランクス派だ。 「少し静かにしたほうがいいんじゃないかな」   視線を手元のノートに落としたまま出来るだけ小さな声で言った。 「どうして?」  どうしてもなにも。 「今は授業中だから」  行儀よく席につき、先生のありがたいお話しを拝聴する生徒たちと志村さんの大きすぎるヒソヒソ話。いつもの授業風景だ。全くもってうっとおしい。 「な、なんだって~」  いやいや絶対知ってたでしょ。
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