トラジェディー@ボーイズサイド。

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俺はいつものように図書館へと足を運ぶ。 「今日もガラガラだな。」 扉を開けると図書館の古びた独特な匂いが込み上げてくる。 周りの奴らが俺をチラチラ見てる。 当然といえば当然だ。 今の俺は一見、図書館には似合わない格好だからな。 端から見れば『不良』だし。 「(あれ? アイツ……。)」 俺は図書館にいる数少ない生徒の中からある人物らしき人を見つけた。 気にしながらも俺は本を返却する。 ガサガサ……。 あれ? 俺の眼鏡、ないや。 あっ……。 気になるあの子の足元にあるのは! 「……おいお前。」 俺はとある女生徒に声をかける。 やべ。 つい『おい、お前』何て言ってしまった……。 「……お前。」 案の定、彼女はムッとする。 しかしまぁ、図書館に似合いすぎる女だ。 胸のあたりまで伸ばした黒い真っすぐの髪。 中肉中背で童顔に赤ふち眼鏡。 黒のブレザーに規定より少し短めの赤と緑のチェックのスカートをはいている。 所謂『優等生』タイプ。 だけど、何処か懐かしい……。 「そう、アンタだ。」 俺はバカだ。 わざと不良に見えるように振る舞って……。 「何ですか?」 ムッとしたのか彼女は俺を睨んだ。 まぁ、当然だよな。 「『何ですか?』じゃない。 アンタの足元。」 俺の眼鏡が何故か彼女の足元に。 しかも、思いっきり踏まれてるし……。 「……へ? あしも……ひゃあっ!」 俺に指摘され彼女は慌てて足をどかした。 気づくの遅いだろ。 天然……なのか? 「それ、俺様の眼鏡。 取り合えず拾ってくれないか?」 壊れてたらどうしよう……。 「ご、ご、ごめんなさい!」 慌てて彼女は俺に眼鏡を差し出した。 「いや、うん。 壊れてなさそうだし大丈夫だ。 それに遠視用だから普段は使わないし。」 俺は眼鏡を確認した。 うん、無傷だ。 「よかったぁ。」 彼女は俺の顔みて安堵してる。 ……さっきから思ってたけど、この子もしかして。 「アンタ、花菱 千夏(はなびし ちなつ)だろ?」 俺の口から咄嗟に元カノの名前が出た。
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