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飼育小屋の中は動物たちでいっぱいなのかと思いきや、そうではなかった。
居たのはたったの一匹、大きなネズミのような生命体だった。
「もしかして……あれがカピバラですか?」
「ああ」
一言で返事をし、男の人はカピバラらしい生き物に寄っていく。私も男の人に続いて行った。
「これが、カピバラ……」
藁の敷かれた柵の中、眠っているのかちょこんと横になり、カピバラは癒されるのほほーんとした顔をしていて、胴体の割りに足が短くって、とにかく愛くるしい姿をしていた。
「か、可愛いっ」
「――風太だ」
「風太?」
「名前」
「この子、風太って言うんですか。それにしても、、可愛いなぁ」
「……雄だから、可愛いじゃなくてかっこいいだ」
「え、あ、はい、すいません……」
雄だから可愛いって言っちゃダメなんだ。この人、こだわり強そうだなあ。
「良かったら触ってみるか?」
「いいんですかっ?」
「ああ。そのかわり、優しく触ってやってくれ」
「はい、もちろんです」
またもやドキドキしつつ、男の人の隣で屈む。そして恐る恐る手を伸ばしていく――
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