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大学生になって始めての春。ひらひらと桜の花が舞い、薄く儚い桜の絨毯にさまがわりしたアスファルトを歩いている。
桜並木の通学路。
今日は大学の入学式。私を含めた周りの人たちはぴしっと真新しいスーツを着込み、ばっちりお洒落をしている。
みんなとても晴れやかで、どこかきらきらと輝いて見えるから不思議だ。きっと新しく始まる大学生活に心踊らしているのだと思う。
私はそうじゃない。大学に入ったのはなんとなくで、目的はおろか希望なんてものは持ち合わせていないし、仲の良い友達が大学受験をしたから私もしただけ。
残念なことにその仲の良い友達は落ちてしまって、浪人生という道を歩むことになってしまったけどね。だからいま、私は一人で大学に向かっている。
できればこの桜並木の美麗な世界を竹ちんと歩きたかったなぁ。
なんてぼやっと竹ちんのことを考えていると、その竹ちんから電話がきた。噂をすればなんとやら、というやつ。
宙空をひらりひらりと舞う花弁を見ながら携帯電話を耳にあてる。
「もしもし? どうしたの竹ちん」
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