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目付きの鋭い男の人に続いて大学の敷地を出ると、田舎の大きな大学だけあってすぐ近くに田んぼがある。
両脇を田んぼに固められたあぜ道を10分ほど歩く。
すると、前方に手作り感のただよう木製の柵に囲まれた、これまた木で出来た建物が目に飛び込んできた。古ぼけた木造の建物、だけど汚ない感じはしなくって、いい味がでてるなぁ、とぼんやりと見ていた。
「アレがアニサーの活動場所だ」
男の人はくいっとアゴで示しながら教えてくれた。
「あそこにカピバラがいるんですか?」
「ああ。――もう“さん”づけはしないのか?」
「いや、あの、その、あれはですね――」
別に焦る必要なんてどこにもないのだけれど、さっきテンパッた自分の言ったことが恥ずかしくって、あわあわと身振り手振りをしてしまう。
「――面白いやつだな」
はうっ、鼻で笑われてしまった。変なやつだと思われたかもしんないよ……
「着いたぞ」
どよよーんと肩を落とす私を気にした様子もなく、男の人は小さな木製の柵を開けながら口にした。
私は言われて顔を上げる。
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