29人が本棚に入れています
本棚に追加
「余計なお世話よ。スピカさんの容態も気になるし、上層部から案内役も仰せつかっているから此処で縫うわ」
ルリが、腰に付けた袋から針と糸の入った箱を出した。ルリが、ソラの隣に座る。ルリの出した箱の中には、太めの糸と針、鋏がが入っている。裁縫用だ。それも、本格的な物だと伺える。再度、上着を奪われたソラは、問う。
「靴も縫えそうだな。裁縫、得意なんだ?」
ソラは、裁縫を手際よく始めたルリを眺めた。それと同時に、ルリの左肩に巻かれている包帯が目に止まる。
「得意というか、なんというか。やらざるを得なかっただけ」
ルリが、短く答えて糸を噛み切る。人の髪の毛で出来た糸を噛み切るのは、容易ではない。また、そんな糸を軽々しく使う輩はいないので、ソラは目線を種術の光に戻した。
「囚人上がり?」
言葉を途切れさせて数秒、ソラは、聞いた。
「ちゃんと、服役したのよ」
ルリが、針を止めずに語る。
「そっか。良かったな」
「ええ。今の神官長は、素性がどうあれ良い人よ。民の話を受け入れてくれる」
「なるほど。砂漠の警備を所望したんだ?」
「そうよ。だから、神様にも感謝している。広い場所を駆け巡れるようにしてくれたんだから」
最初のコメントを投稿しよう!