一章/砂漠

9/79
前へ
/307ページ
次へ
「余計なお世話よ。スピカさんの容態も気になるし、上層部から案内役も仰せつかっているから此処で縫うわ」  ルリが、腰に付けた袋から針と糸の入った箱を出した。ルリが、ソラの隣に座る。ルリの出した箱の中には、太めの糸と針、鋏がが入っている。裁縫用だ。それも、本格的な物だと伺える。再度、上着を奪われたソラは、問う。 「靴も縫えそうだな。裁縫、得意なんだ?」  ソラは、裁縫を手際よく始めたルリを眺めた。それと同時に、ルリの左肩に巻かれている包帯が目に止まる。 「得意というか、なんというか。やらざるを得なかっただけ」  ルリが、短く答えて糸を噛み切る。人の髪の毛で出来た糸を噛み切るのは、容易ではない。また、そんな糸を軽々しく使う輩はいないので、ソラは目線を種術の光に戻した。 「囚人上がり?」  言葉を途切れさせて数秒、ソラは、聞いた。 「ちゃんと、服役したのよ」  ルリが、針を止めずに語る。 「そっか。良かったな」 「ええ。今の神官長は、素性がどうあれ良い人よ。民の話を受け入れてくれる」 「なるほど。砂漠の警備を所望したんだ?」 「そうよ。だから、神様にも感謝している。広い場所を駆け巡れるようにしてくれたんだから」
/307ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加