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「だけど、他にも仕事はあっただろ?」
「砂漠が、大好きだから。刑が終わったらそういう仕事に就きたかったの」
ソラは、政府との戦争が終わった後、神官長が仕事をしている話を聞くと笑ってしまう。職権を使っては、服役者の面倒を見ているのだ。ソラは、神官長が、悪党の道を歩んだ男とは知っている。シェル・クラウンを神官長の娘に渡したことをソラは後悔していなかった。それでも、成り上がりの存在である現神官長を狙う団体は多いらしいが、そこはソラの管轄ではなかったといえる。
「だから、神様も神だと宣言して、困っている民を救うべきだと思うのよ」
ルリが、上着を縫う手を止めた。
「俺は、破壊を求めるから、再建や再生は他人任せなんだ」
ソラは、素っ気なく答える。どうやっても社交辞令は向いていない。政府は総督のアイリに仕切らせ、神官は、ブギルと神官長の姉弟に任せるつもりだ。
「でも、神様でしょう? それとも。本当に世界が嫌いなの?」
上着を握るルリが、睨む。
「そうなのかな?」
ソラは、首を傾げる。そんな哲学を考えていた記憶は無い。
「なら、何故、破滅の詩を探すのよ」
ルリが、縫い終えた上着を膝に掛けた。
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