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「聞いてみたいんだ」
ソラは、思い付いたまま述べる。
「聞いたら死ぬかもしれない。そんな曲を興味本位で探してるの? 信じらんない!」
ルリが、呆れた顔をした。
「そうか?」
ソラは、背伸びする。長い間座りつづけて、身体が痛かったのだ。
「そうよ。普通、興味本位なんて有り得ない。あたし、神様が本気で世界が嫌いなのかと思ったわ」
ルリが、針や糸を片付けて、上着だけをソラに返す。ソラは、礼を口にして上着を受け取った。
「ルリは、世界が好き?」
「そりゃあ、好きよ」
「どうしてそう言えるんだ?」
ソラは、ルリの横顔を見る。
「それも運命だと思ったから」
ルリが、歯切れ良く答える。
「犯罪を犯してしまったことが運命?」
「それは、予想外。でも、助かる方法が無かったの」
ソラは、些か漠然と問い返す。
「一体、どんな事件で捕まってたんだ?」
「……八年前、ウォッカ街の役人を殺したの。あたしを買った役人よ。けど、事故だったのよ。あたしは何もしていないし、その時だって、そいつに撲られただけ。なのに、嘘つき呼ばわりされて、監獄に投げ込まれた」
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