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「事故?」
ソラは、話の先を促した。
「あたしを突き飛ばした時に、あいつは、足を滑らせて、落ちてきた花瓶に当たって死んだの。殺人現場の立証検分では、撲殺とあって、抗議はしたけど受け入れは貰えなかった」
ルリが、明るく語る。
「捜査されなかったんだ?」
「そう。当時、十二歳のあたしに役人を殺せるはずも無いのに」
「なにが、決めてとなったんだ?」
ルリが、頷く。
「信じられないけど、代辯者があたしの犯行を証言した。誰も味方になんかなってくれなかった。あたしは、奴隷商から買われた人間だから」
ソラは、頬を引き攣らせる。大陸の調査組織もなかなか好い加減らしい。
「あたしの代辯者は、あたしがメイドだったことを知ると態度を翻したわ。メイドや奴隷に人権は無いって。代辯者は、無罪より刑期を軽くする方へと裁判を進めたのだから」
「嫌な奴に頼んだから負けたのか。それで、黙って監獄に居たんだな?」
「あたしの他に、何人か雇い人が居たけれど、雇い主の役人が死んで、蜘蛛の子散らすように逃げたわ」
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