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「災難だな」
「災難よ。でも、今の仕事は楽しいから、昔のことはどうでも良い」
「そっか。なら良いことだ」
ソラは、ルリの言葉に満足した。
「それで、神様は、世界が好きなの嫌いなの?」
ルリは、最初の質問を忘れていなかったようだ。ソラは、ルリを見返す。
「正直、分からないんだ。考えたことはあるけれど、今はそれほど憎いとも思わない」
ソラは、上着を羽織り直す。気温の変動が激しい地域だ。種術で気温操作もしていない為か、先程からぐんと寒くなった。それにも関わらず、ルリは、上に何も羽織らない。
「寒くない?」
ソラは、訊ねる。
「何時ものことだから、平気。それにしても遅いな」
ルリが、足を伸ばした。スピカが入った診察室の扉は閉まったままで、医師も看護師も出てこない。もう、数時間経っている。ソラも頷きながら、診察室を気にしていた。
「蠍の毒は抜け難いのか?」
「そんなこと無いと思うけど。あ、そうだ。主治医が居ないと手際が悪いのよこの病院」
「大丈夫、なのかよ」
ソラは、ルリに聞いた。
「あたしに聞かれても、待つしか無いよ。病院は此処だけだから」
ルリは、指を一本立てて笑う。
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