一章/砂漠

17/79
前へ
/307ページ
次へ
「待て、そこまでだ!」  跪きそうなルリを止める。戸惑ったルリの表情が側にあった。 「頼むから、相手を選んで欲しい」  ルリを抱きしめる形で伸ばした手を退けてソラは呟く。 「……あ」  ルリが、呆然とソラを見返していた。ソラは苦笑いを噛み締める。 「そんなに命令が欲しいなら、他の奴に頼めば良いよ。俺、ルリの上司でもなんでもないからさ?」 「あたしじゃなんの役にも立たないとでも云いたいの?」  ルリが、怒りを表した。言葉が刺々しくなる。ソラは、考えた揚句に、診察室を指した。 「なら、せめて、副が、俺を追い掛けて来ないように見張っていてくれないか?」 「……わかったわよ。だけど、砂漠を嘗めたら、駄目なんだから」  神妙な顔で、ルリは言った。 「砂漠の勝手は分からない。せめて、流砂を見付ける手段が欲しい」 「流砂が何故できるか知ってる?」  ルリが、ソラから離れる。 「風で流されてるんじゃないのか?」  ソラは、なんとなく答えた。 「水分を含んだもろい地盤に重みや圧力がかかって崩壊する現象よ。流砂は圧力がかかって崩壊するまでは、普通の地面に見えているの」  ルリが、ゆっくりと説明する。
/307ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加