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「待て、そこまでだ!」
跪きそうなルリを止める。戸惑ったルリの表情が側にあった。
「頼むから、相手を選んで欲しい」
ルリを抱きしめる形で伸ばした手を退けてソラは呟く。
「……あ」
ルリが、呆然とソラを見返していた。ソラは苦笑いを噛み締める。
「そんなに命令が欲しいなら、他の奴に頼めば良いよ。俺、ルリの上司でもなんでもないからさ?」
「あたしじゃなんの役にも立たないとでも云いたいの?」
ルリが、怒りを表した。言葉が刺々しくなる。ソラは、考えた揚句に、診察室を指した。
「なら、せめて、副が、俺を追い掛けて来ないように見張っていてくれないか?」
「……わかったわよ。だけど、砂漠を嘗めたら、駄目なんだから」
神妙な顔で、ルリは言った。
「砂漠の勝手は分からない。せめて、流砂を見付ける手段が欲しい」
「流砂が何故できるか知ってる?」
ルリが、ソラから離れる。
「風で流されてるんじゃないのか?」
ソラは、なんとなく答えた。
「水分を含んだもろい地盤に重みや圧力がかかって崩壊する現象よ。流砂は圧力がかかって崩壊するまでは、普通の地面に見えているの」
ルリが、ゆっくりと説明する。
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