一章/砂漠

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 ルリが住む寮は三階建てで、病院からさほど離れていない場所にあった。  寮の住民は、厨房で酒盛りをしており、寮夫は、買い出しに出掛けたという。  ソラの説明は、ルリが短く説明した。素性は隠したので、周りも名前で呼んで来る。ルリも寮に着いてからは、ソラを名前呼んだ。ソラとしては、名前で呼ばれることに慣れてないので、初めは反応に困っていた。それでも以前よりは、自分の名前だと認識するようになっている。それはそれで進歩したようだ。  ソラは、ルリから食材を貰い、摘みを作る。生野菜を干したものが主流だったが、油脂で炒めて、塩と胡椒で味付けを施した。手軽な摘みのレシピができたと、ルリが言う。周りも喜んでくれたので、ソラとしても満足だった。 「これ……」  ソラは、片付けの最中に、刺だらけの植物を見付ける。厨房の隅に、ちょこんと置かれた小さな鉢植えだ。余りに小さくて気付かなかった。ソラは、緑色した植物に触れた。指先に触れた、刺が、痛い。監獄島では、ユーリが放置して栽培する食物だと言っていたが、本当だろうか。ソラは、植物を眺めた。頭の膨らみに水が入っているとも聞く。砂漠や渇いた地域にある水筒などとも言われている。鉢植えにされた名前も知らない植物と睨み合う。ソラは、調理で使ったナイフを抜き出した。
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