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「サボンを傷つけると祟られるんだから」
ルリが、声を掛けてきたのでソラは、振り返る。寝支度を済ませてきたのか、薄手の布でできた服を着ていた。ソラが知っている中央都市ラグトバークでは余り見掛けない衣装だ。
「サボン?」
「仙人掌のサボン。この街の守り人よ。神様の家来みたいな存在。砂漠で道に迷ったら道標にするんだ」
ルリが、ソラの傍らに来て、ナイフを取り上げる。
「俺の家来にこんなの知らない。形だけみれば、副みたいだけど」
「スピカさんは人間で、神様の部下でしょ?」
ルリが、ナイフを鞘に戻した。
「部下は、六人だけだよ。植物は居ない。みんな人間……あ、ひとりだけ合成人間か」
「え?」
ソラは、島に残してきた部下を思い出した。その中にカプリという青年が居る。彼の素性も複雑なので、言葉を濁した。
「なんでもない。とにかく、こんな刺のある部下は居ないし、居てほしくない」
「そう。けど、うちの隊だけでも五十は居るのに。六人で警備ができるの?」
ルリの素朴な疑問が続く。
「俺は、印判付いて終わり。周りは事務所が部屋みたいなもの。ルリ、寝るんだろ。部屋に戻らなくて良いのか?」
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