一章/砂漠

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「え? どうでしょうか。そこまでは聞いていませんよ」  スピカが、ソラを追い越して足を止める。  砂が、恐ろしい勢いで湧いた。一瞬、涌き水を思い起こさせる。二人は、風と砂に押されて半歩、流される。  砂の中から現れたのは、深紅の殻に覆われた蠍だ。長い尻尾の先にある毒針が、二人を狙う。  ソラが、攻撃を避けきれないスピカを突き飛ばす。蠍の尻尾が、たたき付けた拍子に、砂が、水のように跳ね上がり、二人の視界を奪う。  舞う砂を頭から被るソラに、蠍の鋏が振り下ろされてくる。蠍が、身体を反転させて、前進した。 「グランド・ミュージック!」  蠍の尻尾の方から、スピカが種術を開花させる。炎を纏う蠍の足元から水か立ち上り、蠍を空に突き上げる。蠍が、砂漠に打ち付けられた衝撃で、小さな蠍に分裂した。  数えられない程の蠍が、二人に向かう。スピカは、種術で粉砕するが、ソラの方はどうにもならない。ソラは、炎を身体に巻き付けて迫る蠍から、逃げ惑うだけであった。  然し、それもまた、長時間は続かない。果てしない砂の大地に存在する流砂に足を呑まれて、ソラは舌を打ち鳴らす。 「ソラさん、なにやってるんですか!」  スピカが、身体に張り付いた蠍を取り除きながら叫ぶ。
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