2/9
前へ
/40ページ
次へ
南のずっと遠い海。 蒼。というのがピッタリくるくらいの深く蒼い海の中に、気泡が無数に生まれた。 海上へあがる気泡とは反対に、それを生み出したものは海のそこへと潜っていく。 肢体を優雅にくねらせ、深い谷間へ入っては岩に生息する植物を取り、腰に結わえられたカゴに入れていく。 時には赤や朱色の珊瑚の周りを、見え隠れするように泳ぐ華やかで小さな魚と戯れる。 生きている悦びを知っているのかわからないが、生きるために餌を獲ることに飽きると、今度は思う存分珊瑚礁の中を遊ぶ。 誰にも止められることはないのだから、放っておくと一日中泳いでいるだろう。 そして疲れたら、シダの葉っぱを敷き詰められた岩の上に寝転がる。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加