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そんなクジラを横目で眺めながら、その海を我が物顔で泳ぐ人影。 深い海を平気な顔で泳ぎ、優雅に、そしてすばやく移動する人影がある。 顔立ちは幼いけれど、少女から大人になろうとしている年ごろの女性だ。 水の中を何の抵抗もなく、螺旋を描いて深く潜っていく。 海底の中にぽっかりと空いたブルーホールへ入っていく。 青というよりも蒼に近いそこは、光りが差し込めない場所。 その中を躊躇せずに、少女は泳ぎ進んでいく。 海底に進むにつれ、青さはどんどん濃くなっていくようだ。 しかし、その青は宝石よりも美しい色を放っていた。 傍らには警戒心を解いている何十頭ものイルカの群れが、少女と並行するように泳ぐ。 少女との距離も短く、まるで人間で言うならば家族の一員のごとくに戯れている。 少女は本当に人間なのだろうか。もし人間ならなぜ、海の中で平気なのだろう。 なぜ深い場所を素潜りで泳ぐことが出来るのだろう。
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