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広い海の中を悠々と泳ぐ少女の姿は、まるでイルカそのもの。 近くを航行する船も、イルカが泳いでいると見間違えるほど。 そして珊瑚礁や岩に隠れながら暮らす小さく綺麗な魚や、群れで泳ぐ魚も少女を見ても驚くことはない。 自分たちと同じ生物として受け入れ、そこにいるのが当り前のように、それらと同化している。 そしてイルカたちも外敵から少女を守るように、周りを交差しながら泳ぐ。 いつも海の中にいるわけではなく、時には岩の上に座り、詩を唄う。 その詩には言葉がなく、メロディーだけだった。 でもなぜか懐かしく、心安らぐ詩だった。 船員たちは少女の詩を魔女が唄っていると恐れる者もいたけど、近くの島の地形からあれは人魚だと想像する者もいた。
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