5人が本棚に入れています
本棚に追加
カランコロンと気持ちのいい綺麗な音がして、そっちを向いたら、そこに無精髭の男がいた。
年は30代ぐらいかな。
白い服に帽子、ってことはパティシエなのかな。
「食べるかい?」
俺がその無精髭の男をポケーッと観察していたら、その人は低い声でそう言って、俺にピンクでフワフワのケーキを差し出して来た。
その瞬間、俺は恋に落ちた。
雷が落ちたとかそんなんじゃなくて、世界が変わった。
そんな気がした。
結論から言えば、動転した俺はそれを受け取りも食べもせず、ダッシュで逃げてしまった。
まるで恋する乙女だ、と自分の行動を反省した。
それから数ヵ月、学校のある日は勿論のこと、土日さえも俺はその店の前を通った。
通るだけ、を何度も何度も。
通って、店内であの人の姿を見るだけで嬉しくなって、それで家に帰った。
まるでストーカーじゃないか、と反省しつつも止められなかった。
最初のコメントを投稿しよう!